Web上に出したら削除できない
1度Web上に情報を公開したら、完全に削除するのは不可能である。また、1度公開した情報の拡散を止めるのは非常に困難である。なぜ削除が不可能であるか、なぜ拡散を止めるのが困難であるかを見ていく
Webページは、誰でも簡単に保存可能
まず、Webページは、誰でも簡単に、かつ手間がかからずに保存可能である。ブラウザのメニューの中にある[名前を付けて保存]を選択するだけで保存ができる。
ここで保存したWebページは、たとえ製作者が削除したとしても、保存した人が削除を行わない限り、残り続ける。そのため、1度公開したページを完全に消去するのは不可能と考えるべきである。
Webページは、簡単にコピーが可能
Webページは、非常に簡単にコピーができる。たとえば、紙媒体の文章をコピーしようとした場合、専用のコピー機に現物を乗せ、コピー開始ボタンを押す必要がある。 その際、乗せ方に不備があるとうまくコピーができない。それに対して、Webページなどの電子データは、全く同じものを、コマンド1つ、マウス操作1つで簡単にコピーすることができる。
これは、もし、ページの作者がWebページを削除したとしても、それを要求する人がいて、かつ、そのWebページを保存した人がいる場合、保存した人から要求した人へコピーを渡すことがあるかもしれない。 また、Webページを保存した人が、その保存したWebページを一般に公開するかもしれない。 このように、1度公開してしまったページは、誰もがコピーを保存でき、そのコピーを公開することができる。また、それを制限しようとしても、守らずに拡散させる人が出るかもしれない。 そのため、1度公開したページをインターネット上、あるいは全世界から削除することは、不可能といってもよいと考えられる。
Web Archiveの存在
世の中には、Web Archiveと呼ばれる物が存在する。これは、Webサイトを巡回して、取得できたページをすべて保管し、将来必要となった際に提供するものである。 これは、一応巡回を拒否することは可能ではあるが、拒否しない場合、過去のページがすべて一般に公開されることになる。もちろん、巡回に来なかった期間のページは公開されないが。
これが何を意味しているのか。1度公開したページは、Web Archiveなどのサービスによって、永久に保存され続けることを意味する。 したがって、自らのWebサイトから削除したとしても、Web Archiveに残っていれば、利用者はこれを頼りに情報を取得することが可能である。つまり、Web Archive上の情報を削除しない限り、永久に情報は公開され続けることになる。
もちろん、Web Archive上から削除を依頼することは可能であると考えられるが、通常、その手続きは非常に複雑であることが予想される。したがって、削除は不可能であると考えたほうがよい。
結論
これらのことから、Web上に1度公開した情報は、削除してなかったことにするには不可能であるということが分かった。このことから、情報を発信する際は、次のことに注意する必要がある。
- 本当に公開してよい情報なのか。公開することによるリスク(内容をもとにした誹謗中傷や、差別(実生活上のものも含む)、あるいは秘密情報や著作物等を公表したことによる訴訟の可能性など)は許容範囲内なのか。
- インターネット上のすべてのユーザーに公開する場合、これによって生じる様々なリスク(同上)は許容範囲内なのか
- 公開対象は本当に適切か。範囲が広すぎることによる無断コピーなどのリスクは大丈夫なのか
- 将来、公開した情報を削除する必要がないと本当に判断できるのか。もし、将来削除が必要であると考えるのであれば、削除したとしても他のユーザーやWeb Archive等が保持し、公開することについて問題はないのか。
- たとえ範囲を限定して公開したとしても、閲覧権限のある人が保存や拡散をすることを防ぐのは不可能に違いが、それを行われた場合のリスクは許容範囲内なのか、あるいはそれを確実に行わないような対応はとることができるのか。
以上のことを今一度確かめたうえで、Web上に情報を公開してほしい。もし、上記において1点でも不安等があれば、公開は控えるべきである。